素材と引用
研究が白紙から始まることは、めったにありません。始まりは論文だったり、Web ページだったり、ホワイトボードの写真だったりします。Graphium はそうした外部の出どころを 素材 として抱えておきます。素材は独自のギャラリー・リーダービュー・メモ・グラフを持つ一級の存在で、だからこそ書いたノートはいつでも、根拠になったものを指し示せます。このページでは、素材の取り込み、読みながらの引用、画像からの文字起こし、PDF の翻訳、そしてノートの中で素材やナレッジを引用する方法を扱います。
素材ギャラリー
サイドバーには 素材 セクションがあり、種類ごとに項目が並びます。画像、ドキュメント(PDF と Word ファイル)、データ(装置が吐く .csv / .txt / .dat。表として取り込めます)、動画、音声、URL。どれかをクリックするとギャラリーが開きます。メモは独自のギャラリーを持ち、ノートの隣の メモ から開きます。
ギャラリーの中では次のことができます。
| 操作 | 何ができるか |
|---|---|
| ギャラリー / リスト | サムネイルのカードと、名前・日付・使用中・サイズ の列を持つ表を切り替える |
| 検索ボックス | 名前で素材を絞り込む |
| アップロード | いま開いている種類のファイルをアップロードする |
| URL を追加 | Web ページを URL ブックマークとして登録する |
| PDF を追加 / Word を追加 | PDF や Word ファイルを素材として追加する(ノートは作られません) |
| チェックボックス | 複数選択して、一括のダウンロード・削除・AI 処理を行う |
使用中 の件数は、その素材を参照しているノートを追っています。ノートがまだ使っている素材を削除しようとすると、Graphium は代わりに アーカイブ(推奨) を勧めます。アーカイブすればライブラリからは隠れますが、既存の参照はそのまま生きています。

素材を取り込む
入口はいくつかありますが、行き先はどれも同じライブラリです。
| 経路 | やり方 |
|---|---|
| ドラッグ&ドロップ / ペースト | ノートにファイルを落とす(またはクリップボードから画像を貼る)。ライブラリにアップロードされ、ブロックとして挿入される。ウェブページのコピペに含まれる画像もライブラリに取り込まれるので、元のページが消えても画像は残る |
| スラッシュメニュー | / を入力して 画像・動画・音声・ドキュメント(「新規アップロードまたは既存の PDF / Word から挿入」)・データ(.csv / .txt / .dat を表にする)を選ぶ。ピッカーでは ファイルからアップロード と、挿入方法 の選択(埋め込み = 中身がその場に展開される / リンク = @ リンクで、中身は畳んだまま)が使える |
| URL を貼る | ノートに URL を貼ると小さなメニューが開く。リンク(「インラインテキストとして貼り付け」)か ブックマーク(「プレビューカードとして表示」)。どちらを選んでも URL は URL ギャラリーに登録される |
| ノートに既にあるリンク | まだ登録されていないリンク(AI チャットの回答がノートに書いたリンクなど)をクリックすると、サイドピークのヘッダーに 素材に登録 ボタンが出る。中身を確かめてから登録すると、その URL は URL ギャラリーとグラフに現れる。自動では登録されない |
| スラッシュメニューの ブックマーク / PDF | URL カードや埋め込みの PDF ビューアを、そのままブロックとして挿入する |
| ギャラリーのボタン | アップロード・URL を追加・PDF を追加・Word を追加 — ノートに触らずに素材だけ追加する |
| Markdown の取り込み | ノート一覧の ファイルを取り込む ボタンから Markdown (.md) を取り込む と Obsidian Vault フォルダを取り込む。[[wikilinks]] は、同時に取り込んだファイル → 既存のノート・ナレッジのタイトルの順でリンクに解決される。解決できなかったリンクは [[...]] のテキストのまま残る。Markdown 書き出しもノートへのリンクを [[wikilinks]] として書き出すので、書き出したノートを取り込み直してもリンクは保たれる |
| スマホでの記録 | スマホで撮った写真やメモは受信箱に届く。スマホでの記録を参照 |
Word ファイルには追加の配慮があります。組み込みのプレビューは、ブラウザが表示できない形式(EMF と TIFF。Excel のグラフを貼った文書によくあります)を変換します。また素材メニューの 埋め込み画像を抽出 は、PDF や Word ファイルの中の画像を取り出して、独立した画像素材として登録します。
同じファイルを二度入れたとき v0.37.0 (2026-08-14) で追加
すでにライブラリにあるファイルを入れ直すと、二度目は登録せずに既存の素材を使い回します。見ているのは中身で、名前ではありません。コピーして名前を変えたファイルは同じ素材として扱われますし、どちらも IMG_0001.jpg という名前の別々の写真は、別々の素材のまま残ります。素材は「一つの実体を、複数のノートから使う」ものなので、二つ持っても読み取ったテキスト・メモ・利用ノートが分かれてしまうだけなのです。上の表にあるどの経路でも同じで、画像・動画・音声・PDF・Word・データファイルのいずれにも効きます。
そのままにしてある場合が二つあります。一つはアーカイブ済みの素材で、これは使い回しません。一覧から外したものが黙って戻ってくると困るので、新しい素材として登録されます。もう一つは 128 MB を超えるファイルです。中身を端から端まで読んで比べるほうが、重複そのものより負担が大きいため、判定せずに登録します。
v0.37.0 より前に登録した素材については、サインインしたあとに一度だけ、背後で中身を読んで判定に使う目印を付けていきます。その処理がその素材に届くまでは、入れ直すと今までどおり増えます。素材が多いと少し時間がかかりますが、途中でアプリを閉じても構いません。次に開いたときに続きから進みます。
素材を読む: サイドピークとリーダービュー v0.9.2 (2026-05-26) で追加
素材をクリックすると、ノートの隣のサイドピークで開きます。書いているものから離れずに読めます。全画面で読みたいときは 全画面表示 を使います。
- PDF は、選択できるテキストレイヤー、ズーム、ページ送りとともに描画されます。
- URL は Reader モードで開きます。ページから取得して読みやすく整えた記事ビューです。Reader の中の画像は 画像を保存 でライブラリに取り込めます。まだライブラリに無い URL の場合は、ヘッダーに 素材に登録 が表示されます。ページを確かめてから、残すかどうかを決められます。 v0.29.0 (2026-08-05) で追加
- Word ファイル(.docx)はインラインでプレビューされます。
PDF・Word プレビュー・URL の Reader でテキストを選択すると、小さなピルが現れます: メモに保存。選択した部分が、出どころの付いた引用メモになります。読みながら引用を集めておき、あとで / メニューの メモ(「保存済みメモから挿入」)でノートに挿入する、という流れです。挿入時には 挿入してメモを残す か 挿入してメモを削除 かを聞かれます。出どころのある引用メモは、「— 出典名」という帰属の行が付いた引用ブロックとして挿入されます。

素材ごとのメモ・チャット・グラフ
素材はそれぞれ、自分の作業場を持っています。全画面表示では、右パネルに 4 つのタブが並びます。
| タブ | 表示される内容 |
|---|---|
| メモ | この素材に紐付いたメモ — 保存した引用と、その場のボックスに書いたもの |
| アセットグラフ | この素材を使っているノートのグラフ。ノードをクリックするとノートが開く |
| メタデータ | ファイルの詳細と、埋め込み画像を抽出 のような種類ごとの操作 |
| AI に質問 | この素材だけを対象にしたチャット。文書について質問できる(AI が必要) |
AI に質問 以外は、AI の設定なしで使えます。
素材をノートやナレッジに変える(AI)
PDF・Word・URL 素材のメニューには、AI による 3 つの変換があります。いずれもモデルの設定が必要です(AI のセットアップを参照)。
- 手順を抽出してノート化 — 元の資料を読み、ステップ・ラベル・ハイライトが最初から入った構造化ノートを作ります。そのまま来歴グラフに載る状態です。
- 翻訳してノート化 v0.14.0 (2026-06-05) で追加 — PDF や Web ページの全体を、表示言語にページ単位で翻訳します。元の構造は保たれます。先に用語集を抽出するので用語がぶれず、埋め込まれた図はキャプションの近くに戻して配置されます。
- ナレッジに追加 — 元の資料をナレッジ層に蒸留します。
ギャラリーで素材を複数選択すると、これらの一括版が現れます。メモにも同じことができます。メモギャラリーでメモを選び、1 ステップでナレッジにできます。
画像から文字を読む(OCR) v0.21.0 (2026-07-26) で追加
Graphium は、どんな画像でもその中の文字を読み取れます。装置のスクリーンショット、プロット、ラベルの写真など。処理は Tesseract を使って端末の中だけで完結します。LLM は関わらず、AI の設定も要りません。画像が端末から出ることはありません(Web から取得するのは OCR エンジンとその言語データだけです)。
入口は 3 つあります。
- 画像ブロックをクリックすると、ツールバーに 画像から文字を読む が出ます。
- 同じ項目は、ブロックのドラッグハンドル(⠿)メニューにもあります。
- ノートを開いている間に新しく追加した画像は、自動で読み取られます。進捗トーストが出るので、黙って動くことはありません。
抽出したテキストは、いくつかの場所で働きます。ノート検索がヒットするようになり(結果に 画像テキスト バッジが付きます)、Composer では画像そのものが中の文字で見つかるようになり v0.35.0 (2026-08-13) で追加、画像のツールバーから生のテキストを表示して コピー できます。

ノートの中でナレッジを引用する v0.12.3 (2026-05-29) で追加
/ メニューの「既存の知見」グループにある 知見 と 洞察 は、ナレッジ層の項目を選ぶピッカーを開きます。タイトルで検索し、複数まとめて選んで 挿入(⌘Enter、Windows / Linux は Ctrl+Enter)を押します。引用は @ リンクとして挿入され、参照として記録されます。そのためノートの グラフ タブには、自分のノートから引用先のナレッジへ向かうエッジが現れます。
引用そのものは AI を呼びません。既存の項目にリンクを張るだけです。そのうえで、Composerなどの AI 機能が、この引用を文脈として使います。
素材の @ メンション
ノートで @ を入力すると、リンクできるノートの一覧に加えて、PDF と Word ファイルが並ぶ ドキュメント素材 グループが出ます。素材をメンションすると @ リンクが挿入され、その文書はノートが引用しているものとして登録されます。つまり Composer や AI チャットが、そのノートについて答えるときに、文書の全文とハイライトのメモを読めるようになります。(メディアのピッカーで リンク を選んだ場合も同じです。)
メンション自体は、ただのリンクです。実際に何かを尋ねるまで AI は動きません。
ブロックに紐付いたメモ v0.19.2 (2026-07-23) で追加
思いついたことが、特定の 1 ブロックに属することもあります。ある測定への疑問、あるステップをやり直すためのリマインダーなど。ブロックのドラッグハンドル(⠿)メニューを開いて メモを追加 を選ぶと、そのブロックにメモを紐付けられます。
紐付いたメモは、ノートの メモ パネルに、そのブロックの現在のテキストを映す 紐付け先ブロック チップとともに並びます。チップは編集に追随します。チップをクリックすると、そのブロックまでスクロールしてハイライトされます。あとでブロックを削除しても、チップは最後に見たテキストを保持するので、そのメモが何についてのものだったかは残ります。
すべてが出どころを指している
来歴は、この全体を静かに貫く糸です。派生させたものが、出どころを見失うことはありません。
- 手順を抽出してノート化 や 翻訳してノート化 で作られたノートは、右パネルに ソース タブを持ち、元の文書がそこに入っています。
- ナレッジの項目は 派生元 セクションに出どころを並べます。元になったノート・PDF・URL・Word ファイル・チャット・メモが、同じように並びます。出どころをクリックすると、素材がサイドピークで開きます。
- 引用メモは、挿入されたどのノートにも出どころの帰属を持っていきます。
- ノートグラフやネットワークグラフの素材ノードは、素材を直接開きます。
TIP
これは、ステップのラベルを支えているものと同じ PROV-DM の来歴モデルです。全体像はラベルと来歴を参照してください。
